サウジアラビアに幸運な勝利を得てW杯に臨むドイツ

昨日はロシアW杯前最後のテストマッチ、サウジアラビア戦がレヴァークーゼンで行われた。この試合を最後にドイツ代表は火曜日、大会が行われるロシアに出発する。当然のことながら、この試合は多くの控え選手をテストした最近のテストマッチとは異なり、本番を想定したメンバーで最後の調整を行う。

具体的にはサウジアラビアのような守備ブロックを固めてくるであろう相手をどのようにして崩すか、そして危険なカウンターをどれ程未然に防ぐことが出来るか、力の劣る国を相手にするグループリーグの試合を想定した試運転になる。

ドイツは直近のテストマッチ、ブラジル、オーストリアに敗戦したことで、本番に臨むに当たりその強さを不安視する声もなくはない。しかし、ドイツの場合本番前3月、5月のテストマッチの結果内容が悪いのはもはやお約束だ。2年前のEURO2016ではイングランド、スロバキアに敗戦、前回のW杯ではポーランド、カメル―ンに引き分け、EURO2012においてはフランス、スイスに敗戦した。このスイス戦に至っては5失点している。

それでも毎回本戦はキッチリベスト4まで進出しているので、これらのテストマッチの結果で不安になる必要は全くない。あくまでテストマッチは本番に向けての課題、意義を明確にして臨むことが重要だ。結果も重要かもしれないが、何も単に気持ちよく勝てばよい訳ではない。

とはいえこの本番前、最後の試合に関してはドイツは毎回良い仕上がり具合を見せてきた。今回もこのサウジ戦で内容の伴った勝利する事により、気分よくロシアに出発したい所だ。

ドイツのスタメンはノイアー、キミッヒ、フンメルス、ボアテング、ヘクター、ケディラ、クロース、ミュラー、ロイス、ドラクスラー、ヴェルナーだ。軽い負傷で休みを取っているエジルが本番ではドラクスラーの代わりに入るだろう。それ以外は、現時点でのベストメンバーでこの試合に臨んだ。

試合はドイツがいきなり前半8分に先制し幸先のよいスタートを切る。中央からやや左サイドで相手守備陣の裏に飛び出したロイスが、キミッヒからの長いパスを中央のヴェルナーに折り返し、これをヴェルナーはゴール至近距離から決めた。ロイスはこの3分後にもポストに当たるミドルシュートを放ち、その後も多くのチャンスに絡む。

サウジは思ったほど激しい守備をしてこず、ドイツの選手は比較的スペースがある中でボールを回すことが出来る。一週間後にロシアとの開幕戦を控えており、それを想定しているのは間違いない。ドイツは前半の中頃になると明らかに攻守ともに軽率なプレーを繰り返すようになり、サウジがカウンターからその身体能力を活かして攻め込む場面が散見されるようになる。同点になってもおかしくないチャンスもあった。

しかし、ドイツは前半も終わりが近づくと再びペースを掴む。左サイド、ヘクターのグラウンダーのクロスから、PA内でロイス―ドラクスラー―ロイス―ドラクスラー―ミュラーという鮮やかなコンビでネットを揺らす。これは不当にオフサイドに判定されてゴールとはならなかった。やや技巧を凝らしすぎな感はあるが、見事なコンビネーションである。その1分後、PA内左に飛び出したヴェルナーが中央に折り返しこれをミュラーが相手DFと競り合いながら押し込んだ(公式にはオウンゴール)。ドイツは2点リードで試合を折り返す。

後半に入るとドイツは更にギアを上げ、最初の10分間で3,4度の決定機を演出するが、相手GKの好守もあり得点できない。そうこうするうちに選手交代などが始まり、試合は完全に締まりのないものになっていく。両チームとも怪我を恐れて激しいプレーを控えるようになり、これで十分と言わんばかりだ。

しかし、試合は終了間際に突如の緊張感を帯びてくる。85分、ケディラが軽率なファウルでサウジにPKを与え、これでサウジは1点を返した。すると、ここまで来たら同点に追いつきたいサウジと、2-1では納得のいかないドイツ、オープンな展開から両者のプレーに突如として真剣味が帯びてきた。

そして、サウジはロスタイムに同点に追いつく決定的なチャンスを得る。左サイドでドイツ守備陣の裏に飛び出したアル=ジャシムはドイツゴール前で完全にフリーになり、並走してきた中央のアル=サラウィに決定的なラストパスを出した。これは、最後フンメルスの必死のタックルで失点を免れたが、ここで失点を待免れたのはドイツにとってはラッキーとも言える。試合はこのまま2-1でドイツが勝利した。

全体的に見れば、ドイツの選手たちの仕上がり具合はW杯本番に臨むに当たり十分とは言えなかった。攻撃面で幾度も良い形は見せたものの、集中力、フレッシュさを欠いた軽率なプレーが多く、緩い守備や軽率なパスミスからピンチを招いた。本番最後のテストマッチとして、サウジ相手に2-1というスコア及び内容は、気分よく本番に臨めるような結果ではなく、仮にこれが最後の大ピンチを決められて引き分けにでもなってもいたら大騒ぎになっていただろう。

しかし、ドイツの目標はあくまでも優勝であり、現段階で選手たちの動きが悪いのはさほど心配する必要はないと見ている。本番初戦であるメキシコ戦で、いきなりコンディションが100%になることはないと思うが、今回は経験豊富な選手が揃っており、まずはキッチリと勝ち点3を得る為の状態に仕上げてくるだろう。チームの戦術、連携面からみればチームは既に出来上がっている印象で、問題は選手のコンディションだけだ。今回は主力選手に大きな怪我もなく、ほぼベストメンバーで本番に臨めるのは大きなアドバンテージと言える。

とりわけ、昨日トップ下で先発したロイスは裏への飛び出し、タイミングの良いパス、精度の高いキックを駆使してドイツの攻撃の中心となった。ロイスは前回のW杯ではこの本番前最後のテストマッチで負傷してメンバーを外れざるを得なかったので、初の大舞台に期するものも大きいだろう。

寧ろ昨日の試合で私が一番気になったのは、途中出場したギュンドアンが未だにトルコ大統領エルドアンとの会合でドイツのファンからブーイングを浴びている点だ。このテーマはドイツでは未だに燻っており、レーヴやチームマネージャーのビアホフもこの事に苛立ちを隠さない。選手たちもロシアに到着すればこの件から幾分解放されるとは思われるが、これから本番に臨むドイツ代表の雰囲気を著しく害するテーマであることは間違いないだろう。