シーズン最多アシストを記録した、トーマス・ミュラーの秀逸な判断力

無観客で継続されているブンデスリーガは先週30節が行われ、FCバイエルンは4-2でバイヤー・レヴァークーゼンに勝利した。この試合でFCバイエルンのトーマス・ミュラーは2得点をアシストし、シーズン歴代最多の20アシストを記録した。私はミュラーのプレーは若い頃から見てきたが、この記録はミュラーの高い能力を示す至極納得できるものだ。

ミュラーはドイツでは一般的に”Raumdeuter”と呼ばれている。これはミュラーが2011年に南ドイツ新聞とのインタビューで自らのプレースタイルについて問われた時、自ら発した言葉でもある。”Raum”とは空間のこと、”Deuter”とは何かを解釈したり、説明したりする預言者のような存在である。

つまり、ミュラーは誰も気付かないようなゴール前のスペースを発見し、そこへ走り込みゴールを落とし入れる不思議な能力を持った選手だという事だ。そして、その得点力の高さがミュラーの優れた点だと世間的には認知されている。このミュラーの決定力の高さがあったからこそ、ドイツ代表監督ヨアヒム・レーヴは一時本職のFWを干してまで、ゼロトップに拘ったことは間違いない。

そして更にこのミュラーのもう一つの傑出した能力として、ゴール前で常に確率の高い味方にパスを出来るその秀逸な判断力を挙げておきたい。ミュラーはこれまでのキャリアを見る限り、かなり監督の戦術に左右される選手でもあり、直近のシーズンではベンチに干される事も多くなってきた。確かに、得点力に関しては明らかな陰りが見える。しかし、アシスト数に関しては直近のシーズンでも安定した数値を出している:

2015/2016 : 得点20、アシスト7
2016/2017 : 得点5、アシスト14
2017/2018 : 得点8、アシスト16
2018/2019 : 得点6、アシスト12
2019/2020 : 得点7、アシスト20 (30節まで)

監督アンチェロッティの下で絶不調に陥り、ベンチに干される事が多くなったあの2016/2017シーズンでさえミュラーは14アシストを記録している。昨シーズンもニコ・コバチの下で干されつつあったが、監督がフリックになって以降完全に復活した。また、寧ろ得点力に陰りが出てきた分、より多くのアシストでチームに貢献しているとも言える。

ミュラーはとにかく、ゴール前でフリーの味方を見つけるのが上手いのだ。これは自らの視野の範囲内のみならず、360度全ての位置の味方を把握していると言っても過言ではない。仮に自らがシュートできる位置に居ても、ミュラーはゴールの確率の高い味方に迷わずパスをする。そして、このミュラーの判断はほぼ常に正しく、そのプレーの精度とタイミングも抜群である。

昨日のDFBカップ準決勝、フランクフルト戦の先制点の場面もミュラーは自らシュートに持ち込めた筈だが、ゴール正面に走り込んだペリジッチにパスをした。それも一切の迷いもなく、落ち着き払ったチップキックである。逆に言えば、ミュラーは自らがシュートを打つ場合、常にゴールの正面から狙いすましたシュートを放つ。難しい事は一切しない。

私はミュラーはもはやFCバイエルンから放出されると見ていたのだが、つい最近2023年までその契約を延長した。ドイツ代表では既に構想外になっているのは残念だが、FCバイエルンでは監督フリックである限り、その経験と明るいキャラクターでチームに必要とされ続けるだろう。